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くもり日の影としなれぬ我なれば目にこそ見えね‥散り椿

くもり日の影としなれぬ我なれば目にこそ見えね身をばはなれず

曇り日の影法師のようにほのかに寄り添う影となった私ですから、お目には見えないでしょうが、あなたのそばを決して離れません。

曇り日の影としなれる我なれば目にこそ見えね身をばはなれず(古今728)

 

映画「散り椿」の中で、篠が新兵衛を思う気持ちを采女に伝えた歌です。

 

葉室 麟(はむろ りん)「散り椿」より

ふたりがいる京の一条通り西大路東入ル、地蔵院の本堂脇にある椿は花が落ちず、花弁が一片(ひとひら)ずつ、散っていく。このため、-散り椿 と呼ばれていた。

地蔵院は神亀3年(726)、行基が摂津に創建し、天正年間、豊臣秀吉の命によって京に移された。境内には秀吉が寄進した五色八重散椿がある。秀吉が朝鮮へ出兵した際に、加藤清正が持ち帰ったものだという。

 

 

葉室 麟(はむろ りん)

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。12年『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞。いま最も注目される歴史・時代小説作家


扇野藩のお家騒動を舞台とした時代ミステリー小説、最後の強盗返には驚かされました。ミステリーの縦糸に対して、愛情、友情、親子愛(実際は伯父と甥)を横糸に織り込まれたストーリー展開が素晴らしいです。

良い物語だった。
新兵衛と采女の篠を介した関係や彼らの矜持だけでなく、中途半端な風見鶏だった藤吾の成長や、里見の優しさなど、人と人が関わることで互いに影響し合う機微の描き方は派手ではないものの静かな余韻を残します。

葉室 麟(はむろ りん)文学賞受賞作品一覧

2005年 – 『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞受賞。
2007年 – 『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞。
2009年 – 『いのちなりけり』で第140回直木賞候補。
2009年 – 『秋月記』で第22回山本周五郎賞候補、第141回直木賞候補。
2010年 – 『花や散るらん』で第142回直木賞候補。
2011年 – 『恋しぐれ』で第145回直木賞候補。
2012年 – 『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞。
2016年 – 『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。

曇り日の影としなれる我なれば目にこそ見えね身をばはなれず

映画「散り椿」の中で、篠が新兵衛を思う気持ちを采女に伝えた歌です。

曇り日の影としなれる我なれば目にこそ見えね身をばはなれず(古今728)

【通釈】曇り日の影法師のようにほのかに寄り添う影となった私ですから、お目には見えないでしょうが、あなたのそばを決して離れません。

 

まとめと関連情報

 

残る椿があると思えばこその散り椿(葉室 麟)
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