残る椿があると思えばこその散り椿(葉室 麟)

残る椿があると思えばこその散り椿(葉室 麟)

かつて一刀流道場の四天王と謳われた勘定方の瓜生新兵衛は、上役の不正を訴え藩を追われた。18年後、妻・篠と死に別れて帰藩した新兵衛が目の当たりにしたのは、藩主代替わりに伴う側用人と家老の対立と藩内に隠された秘密だった。

散る椿は、残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるもの―たとえこの世を去ろうとも、ひとの想いは深く生き続ける。秘めた想いを胸に、誠実に生きようと葛藤する人々を描いた感動長編!


 

葉室 麟(はむろ りん)

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。12年『蜩ノ記』で第146回直木賞を受賞。いま最も注目される歴史・時代小説作家


扇野藩のお家騒動を舞台とした時代ミステリー小説、最後の強盗返には驚かされました。ミステリーの縦糸に対して、愛情、友情、親子愛(実際は伯父と甥)を横糸に織り込まれたストーリー展開が素晴らしいです。

良い物語だった。
新兵衛と采女の篠を介した関係や彼らの矜持だけでなく、中途半端な風見鶏だった藤吾の成長や、里見の優しさなど、人と人が関わることで互いに影響し合う機微の描き方は派手ではないものの静かな余韻を残します。

葉室 麟(はむろ りん)文学賞受賞作品一覧

2005年 – 『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞受賞。
2007年 – 『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞。
2009年 – 『いのちなりけり』で第140回直木賞候補。
2009年 – 『秋月記』で第22回山本周五郎賞候補、第141回直木賞候補。
2010年 – 『花や散るらん』で第142回直木賞候補。
2011年 – 『恋しぐれ』で第145回直木賞候補。
2012年 – 『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞。
2016年 – 『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。

曇り日の影としなれる我なれば目にこそ見えね身をばはなれず

映画「散り椿」の中で、篠が新兵衛を思う気持ちを采女に伝えた歌です。

曇り日の影としなれる我なれば目にこそ見えね身をばはなれず(古今728)

【通釈】曇り日の影法師のようにほのかに寄り添う影となった私ですから、お目には見えないでしょうが、あなたのそばを決して離れません。

 

まとめと関連情報


残る椿があると思えばこその散り椿(葉室 麟)

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